
工程表は、工事の開始から完成までの作業内容と日程をまとめた表です。
電気工事では、建築・空調・衛生などの他業者と作業場所が重なるため、工程管理がうまくできていないと、次のような問題が起こります。
- 配管作業がコンクリート打設に間に合わない
- 天井を閉じたあとに配線漏れが見つかる
- 照明器具の納入が間に合わない
- 他業者と作業場所が重なる
- 試験や検査の時間を確保できない
工程表は、単に予定日を記入するだけの書類ではありません。
「いつ・どこで・誰が・何を行うのか」を整理し、工事を安全かつ予定どおりに進めるための重要な管理資料です。
この記事では、電気工事における工程表の基本的な書き方と、作成時の注意点を現場目線で解説します。
工程表とは
工程表とは、工事に必要な作業を洗い出し、それぞれの開始日・終了日・作業順序を見える化したものです。
工程表を見ることで、次の内容を確認できます。
- 工事全体の期間
- 各作業の開始日と終了日
- 作業の順番
- 他工種との関係
- 必要な作業員数
- 材料や機器の納入時期
- 検査や試験の予定
- 現在の進捗状況
現場代理人や施工管理者は、工程表を使って作業員、材料、施工図、他業者との調整を行います。
工程表を作成する目的
工事の全体像を把握する
工程表があれば、着工から完成までに必要な作業を一覧で確認できます。
目の前の作業だけでなく、数週間後・数か月後に必要となる準備を早めに進められます。
作業の順番を整理する
電気工事には、決められた順番で進めなければならない作業があります。
例えば、天井内の工事は一般的に次のように進みます。
- 施工図の作成・承認
- インサートやスリーブの施工
- 配管・ケーブルラックの施工
- 入線・配線
- ボックスや器具の位置確認
- 天井閉鎖前検査
- 天井仕上げ
- 照明器具や配線器具の取付け
- 試験・調整
前の作業が終わらなければ、次の作業へ進めない場合があります。工程表を作ることで、この前後関係を整理できます。
他業者との作業を調整する
建設現場では、同じ場所で複数の業者が作業します。
電気工事だけの都合で工程を決めると、空調ダクトや衛生配管、天井下地などと作業が重なる可能性があります。
総合工程表や他業者の工程を確認し、作業場所と施工時期を調整することが重要です。
人員や材料を手配する
作業日が決まれば、必要な職人の人数や材料の納入時期を計画できます。
工程表がないまま作業を進めると、人手不足や材料待ちによって工程が遅れる原因になります。
進捗の遅れを早く発見する
計画と実績を比較すると、工事が予定どおり進んでいるか確認できます。
遅れを早期に発見できれば、増員、作業順序の変更、材料手配の前倒しなどの対策を検討できます。
工程表の主な種類
工事現場では、目的に応じて複数の工程表を使い分けます。
総合工程表
工事全体の流れをまとめた工程表です。
着工から完成までの主要な工事や検査予定が記載され、建築・電気・空調・衛生など、各工種の関係を確認するために使用します。
電気工事の工程表を作る場合は、まず総合工程表を確認します。
月間工程表
1か月程度の作業予定をまとめた工程表です。
総合工程表よりも詳しく、階・部屋・工区ごとの作業内容や期間を記載します。
月末に翌月の工程を確認し、作業員や材料の手配へ反映させます。
週間工程表
1週間の作業内容を、日ごとにまとめた工程表です。
次のような具体的な情報を記載します。
- 作業場所
- 作業内容
- 作業員数
- 使用する重機や工具
- 搬入予定
- 停電作業
- 他業者との調整事項
- 安全上の注意事項
日々の作業打ち合わせに使われる実務的な工程表です。
詳細工程表
特定の工事について、作業を細かく分解した工程表です。
受変電設備の更新、停電切替え、機器搬入、試運転など、複数の作業が連続する場合に作成します。
バーチャート工程表
作業期間を横棒で表した、最も一般的な工程表です。
縦軸に作業項目、横軸に日付を記載し、それぞれの作業期間を横棒で示します。
作成しやすく、作業期間を直感的に把握できることがメリットです。
一方で、作業同士の細かな前後関係や、どの工程が全体の完成日に影響するかが分かりにくい場合があります。
ネットワーク工程表
作業の順序やつながりを矢印などで表した工程表です。
複雑な工事の前後関係や、遅れると完成日に影響する重要な工程を把握しやすいことが特徴です。
ただし、バーチャートに比べて作成や修正には知識が必要です。
電気工事工程表の基本項目
工程表には、最低限、次の項目を記載します。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 工事名 | 現場や工事の正式名称 |
| 作成日 | 工程表を作成・更新した日 |
| 工事期間 | 着工日から完成日まで |
| 作業項目 | 配管、配線、器具取付けなど |
| 作業場所 | 階、部屋、工区、系統など |
| 開始日 | 作業を始める予定日 |
| 終了日 | 作業を終える予定日 |
| 作業日数 | 作業に必要な日数 |
| 作業員数 | 予定している人数 |
| 進捗率 | 計画または実績の進み具合 |
| 関連工程 | 前後の作業や他業者の工程 |
| 備考 | 搬入、検査、停電などの注意事項 |
現場の規模や提出先に合わせて、必要な項目を追加します。
工程表の書き方
1.工事期間と完成日を確認する
最初に、契約工期と現場の総合工程表を確認します。
確認する主な日程は次のとおりです。
- 着工日
- 建物の完成予定日
- 電気設備の使用開始日
- 受電日
- 停電作業日
- 消防検査
- 官公庁検査
- 施主検査
- 試運転調整期間
- 引渡し日
完成日だけでなく、途中にある重要な期限を押さえることが大切です。
2.施工範囲を確認する
設計図、仕様書、見積書などから、自社の施工範囲を確認します。
電気工事といっても、現場によって施工範囲は異なります。
- 受変電設備
- 幹線設備
- 電灯設備
- コンセント設備
- 動力設備
- 接地設備
- 非常電源設備
- 火災報知設備
- 放送設備
- 通信設備
- 防犯設備
- 避雷設備
施工範囲の確認が不十分だと、工程表に必要な作業が抜ける可能性があります。
3.工事を作業単位に分ける
施工範囲を確認したら、工事を管理しやすい作業単位へ分解します。
例えば「電気工事一式」と記載するだけでは、進捗を管理できません。
次のように細かく分けます。
- 施工図作成
- 機器承認
- 材料手配
- スリーブ・インサート
- 埋込配管
- 天井内配管
- ケーブルラック
- 幹線ケーブル敷設
- 分岐配線
- 盤据付け
- 照明器具取付け
- 配線器具取付け
- 結線
- 絶縁抵抗測定
- 動作試験
- 自主検査
- 是正工事
- 完成図書作成
作業項目が大きすぎると、どこまで進んでいるのか判断できません。一方で、細かく分けすぎると工程表が見づらくなります。
現場の規模や工程表の使用目的に合わせて調整しましょう。
4.作業場所ごとに分ける
同じ作業でも、場所ごとに工程が異なる場合があります。
次のような単位で区分します。
- 階別
- 部屋別
- 工区別
- 建物別
- 系統別
- 設備別
例えば「天井内配管」だけでなく、次のように記載すると管理しやすくなります。
- 1階事務室・天井内配管
- 1階廊下・天井内配管
- 2階事務室・天井内配管
- 2階廊下・天井内配管
5.作業の前後関係を整理する
各作業について、開始するために何が完了している必要があるかを確認します。
例えば照明器具を取り付けるためには、一般的に次の条件が必要です。
- 器具が承認されている
- 器具が現場へ納入されている
- 配線が完了している
- 天井が仕上がっている
- 取付位置が確定している
- 他設備との干渉が解消されている
「前の作業が終わらないと始められない工程」を整理しておくと、無理のない工程を組めます。
6.必要な作業日数を計算する
作業量と施工能力から、必要な日数を計算します。
基本的な考え方は次のとおりです。
必要日数=施工数量÷1日当たりの施工数量
例えば、配管数量が300mあり、1班が1日に30m施工できる場合は、単純計算で10日必要です。
ただし、実際の現場では次の条件も考慮します。
- 作業場所の広さ
- 高所作業の有無
- 他業者との重なり
- 資材運搬に必要な時間
- 作業員の経験
- 現場の入場制限
- 騒音作業の時間制限
- 手直しや予備の日数
机上の数量だけで判断せず、現場条件に合わせて作業日数を設定しましょう。
7.必要な作業員数を決める
工程内に作業を完了させるため、必要な作業員数を検討します。
人数を増やせば、必ず作業が早くなるとは限りません。狭い場所に作業員を集中させると、かえって作業効率が落ちる場合があります。
作業場所、作業内容、安全性を考慮して適切な班編成を行います。
8.材料・機器の納期を入れる
電気工事では、施工そのものよりも、機器の製作や材料の納入に時間がかかることがあります。
特に注意したいものは次のとおりです。
- 受変電設備
- 配電盤・分電盤
- 制御盤
- 発電機
- UPS
- 特注照明器具
- 火災報知設備
- 通信機器
- ケーブル
- ケーブルラック
工程表には、取付日だけでなく、次の予定も入れます。
- 仕様の確認
- 製作図・承認図の提出
- 承認
- 発注
- 製作
- 工場検査
- 現場搬入
- 機器据付け
- 結線
- 試験・調整
承認の遅れが、そのまま納入遅れにつながることがあります。施工工程とは別に、承認・発注工程を管理することが重要です。
9.検査と試験の日程を入れる
工程表では、施工期間だけでなく、検査や試験の期間も確保します。
- 材料検収
- 隠蔽前検査
- 天井閉鎖前検査
- 絶縁抵抗測定
- 接地抵抗測定
- 導通試験
- 動作試験
- 照度測定
- 非常照明の確認
- 防火区画貫通処理の確認
- 自主検査
- 元請検査
- 施主検査
- 官公庁検査
検査で指摘が出た場合に備えて、是正と再確認の期間も見込んでおきます。
10.余裕期間を確保する
工程を隙間なく組むと、一つの遅れが工事全体へ影響します。
次のようなリスクを考慮し、必要に応じて余裕を持たせます。
- 天候不良
- 設計変更
- 材料の納入遅れ
- 他業者の工程遅延
- 施工不良による手直し
- 検査指摘
- 作業員の不足
- 搬入経路の変更
余裕期間は、何もしない時間ではありません。工程の変化に対応するための時間です。
電気工事の工程表記載例
小規模な事務所改修工事を想定した工程表の例です。
| 作業項目 | 1週目 | 2週目 | 3週目 | 4週目 |
|---|---|---|---|---|
| 現地調査・施工図作成 | ● | |||
| 材料・機器手配 | ● | ● | ||
| 既設設備撤去 | ● | |||
| 天井内配管 | ● | |||
| ケーブル配線 | ● | ● | ||
| 盤・機器取付け | ● | |||
| 照明・配線器具取付け | ● | ● | ||
| 結線・回路確認 | ● | |||
| 絶縁抵抗・動作試験 | ● | |||
| 自主検査・是正 | ● | |||
| 完成図書作成 | ● | ● |
実際には、階や工区、作業員数、検査日なども追加します。
工程表を作るときの重要ポイント
総合工程表と整合させる
電気工事だけで成立する工程表を作っても、建築工程と合っていなければ使えません。
特に、次の建築工程を確認します。
- コンクリート打設
- 間仕切り壁の施工
- 天井下地
- 天井ボード
- 塗装
- 床仕上げ
- 建具取付け
- 足場解体
- クリーニング
電気工事がどのタイミングで入るのかを明確にしましょう。
隠蔽工程を見落とさない
コンクリート、壁、天井などで隠れる部分は、あとから施工できない場合があります。
- スリーブ
- インサート
- スラブ配管
- 壁内配管
- 天井内配管
- ケーブルラック
- 防火区画貫通処理
- 接地工事
隠蔽前の施工、工事写真、検査までを工程に入れます。
「施工図」と「材料手配」を早めに入れる
工程が遅れる原因は、現場作業だけではありません。
施工図が承認されなければ、材料の発注や施工を始められないことがあります。
工程表には、施工図の作成・提出・承認と、機器・材料の手配期間を必ず入れましょう。
マイルストーンを明確にする
マイルストーンとは、工程上の重要な節目です。
電気工事では、次のような日が該当します。
- 受電日
- 停電切替日
- 機器搬入日
- 天井閉鎖日
- 消防検査日
- 施主検査日
- 引渡し日
マイルストーンは工程表の中で目立つように表示します。
計画と実績を分けて記録する
工程表は作って終わりではありません。
予定を示す「計画線」と、実際の進捗を示す「実績線」を分けて記録すると、遅れを把握しやすくなります。
進捗率だけでなく、残っている作業量も確認しましょう。
「80%完了」と書いてあっても、残り20%に時間のかかる結線や試験が含まれている場合があります。
工程表のよくある失敗
作業項目が大ざっぱすぎる
「電気工事一式」とだけ記載しても、進捗管理はできません。
配管、配線、器具取付け、結線、試験など、管理できる作業単位へ分けましょう。
現場を確認せずに作成する
図面上では施工できそうでも、実際には作業場所が狭い、搬入できない、他設備と干渉するといった問題があります。
工程表を作成する前に、現地と施工条件を確認します。
他業者の工程を考慮していない
電気工事だけを優先した工程は、現場全体では成立しません。
建築・空調・衛生などの担当者と、作業場所や順序を調整しましょう。
材料の納期を考慮していない
取付日だけを工程表に入れても、製品が届かなければ施工できません。
承認、発注、製作、搬入までの期間を逆算します。
検査期間を入れていない
施工完了日を工事完了日としてしまうと、試験、検査、手直しの時間がなくなります。
完成前には、自主検査と是正期間を確保しましょう。
工程表を更新していない
現場の工程は、天候、設計変更、納入状況などによって変化します。
古い工程表を使い続けると、関係者によって認識が異なり、手配漏れや作業の重複が発生します。
定期的に進捗を確認し、変更内容を工程表へ反映させましょう。
工程が遅れたときの対応
工程の遅れを確認したら、まず原因と影響範囲を整理します。
遅れの原因を確認する
- 作業員が不足している
- 材料が納入されていない
- 施工図が承認されていない
- 他業者の作業が終わっていない
- 作業場所を確保できない
- 設計変更が発生した
- 手直しが発生した
原因が分からないまま増員しても、解決しない場合があります。
残作業を確認する
完了した作業と残っている作業を、場所・数量・作業内容ごとに整理します。
残作業が明確になれば、必要な日数と人員を再計算できます。
回復工程を作成する
工程の遅れを取り戻すため、次の方法を検討します。
- 作業員を増員する
- 班を分けて並行作業する
- 作業順序を変更する
- 材料を先行搬入する
- 他業者と作業場所を再調整する
- 検査を工区ごとに分ける
- 施工方法を見直す
無理な工程短縮は、品質低下や事故につながる可能性があります。安全と品質を確保できる範囲で調整することが重要です。
工程表作成チェックリスト
- 契約工期と引渡し日を確認した
- 総合工程表を確認した
- 電気工事の施工範囲を確認した
- 作業を管理できる単位に分けた
- 階・工区・部屋ごとに整理した
- 作業の前後関係を確認した
- 他業者の工程と調整した
- 作業数量から必要日数を計算した
- 必要な作業員数を検討した
- 施工図の作成・承認期間を入れた
- 材料と機器の納期を確認した
- 搬入予定日を入れた
- 隠蔽前検査を入れた
- 試験・検査の日程を入れた
- 是正期間を確保した
- 重要な期限を明確にした
- 計画と実績を比較できる
- 定期的な更新日を決めた
まとめ
工程表を作成するときは、工事名と日付を並べるだけでは不十分です。
重要なのは、次の内容を整理することです。
- 工事を管理できる作業単位へ分ける
- 作業の順番と前後関係を確認する
- 建築や他設備の工程と調整する
- 施工図、承認、材料手配も工程に入れる
- 隠蔽工事と検査のタイミングを押さえる
- 作業量から必要日数と人員を考える
- 計画と実績を比較して定期的に更新する
良い工程表とは、見た目が細かい工程表ではありません。
現場の関係者が次に何を準備し、いつまでに何を終わらせるのか判断できる工程表です。
まずは総合工程表を確認し、完成日から逆算して、電気工事に必要な作業を一つずつ書き出してみましょう。



