
施工計画書を初めて作ることになり、
・何から書き始めればよいのか分からない
・どのような目次にすればよいのか迷っている
・提出しても何度も差し戻されてしまう
と悩んでいませんか。
施工計画書には、すべての現場で共通する一つの正解があるわけではありません。施主や監理者、ゼネコンによって、求められる内容や書式が異なるからです。
それでも、私が電気工事の現場で施工計画書を作成してきた経験上、多くの現場に共通する基本的な構成があります。
この記事では、電気工事の工種別施工計画書に絞り、作成する目的や時期、基本的な8項目、差し戻されにくくするためのポイントを解説します。
最終的には元請や監理者から指定された書式を優先する必要がありますが、施工計画書のタタキ台を作る際の参考にしてください。

施工計画書とは
施工計画書とは、工事をどのような体制、手順、材料、管理基準で進めるのかを、施工前に明確にするための書類です。
電気設備工事では、施工図だけでは表現しきれない施工方法や使用材料、作業手順、確認方法、検査基準などを関係者で共有する役割があります。
簡単にいえば、施工前に次の内容を決めておくための書類です。
・誰が施工するのか
・どの材料を使用するのか
・どのような手順で施工するのか
・何を基準に品質を確認するのか
提出すること自体が目的ではありません。計画した内容を職長や作業員と共有し、実際の施工と品質管理に反映してこそ意味があります。
施工計画書には2つの種類がある
建築工事で使用される施工計画書は、大きく「総合施工計画書」と「工種別施工計画書」に分けられます。
総合施工計画書
総合施工計画書は、工事全体の進め方、施工体制、工程管理、安全管理、品質管理などをまとめた計画書です。
一般的な建築工事では、ゼネコンなどの元請会社が工事着手前に作成します。
工種別施工計画書
工種別施工計画書は、工種ごとの施工方法や使用材料、作業手順、検査方法などを具体的にまとめた計画書でサブコン各社(電気設備、空調設備、衛生設備など)が作成するパターンが多いです。
電気設備工事では、例えば次のような工種があります。
・配管・配線工事
・接地工事
・地中埋設配管工事
・受変電設備工事
・発電設備工事
・機器搬入・据付工事
・停電作業
・総合連動試験
電気工事を担当するサブコンや専門工事会社が原案を作成し、元請を通して発注者や監理者の確認・承諾を受けるケースが多いです。
ただし、「総合施工計画書は必ずゼネコン、工種別施工計画書は必ずサブコン」と決まっているわけではありません。発注形態や工事規模によって作成者は異なるため、この記事では一般的な建築工事を想定して解説します。
施工計画書を作成する目的
施工計画書は、監理者へ提出するためだけの書類ではありません。
主な目的は次のとおりです。
・設計図書の要求を満たす施工方法を明確にする
・使用材料や施工基準を統一する
・現場代理人、職長、作業員で施工方法を共有する
・品質上の重要ポイントを施工前に確認する
・自主検査や監理者検査の基準を決める
・他工種との取り合いや施工時期を調整する
・施工ミスや手戻りを防止する
施工図に線や寸法が記載されていても、具体的な支持方法、固定方法、接続方法、検査方法までは伝わらないことがあります。その不足部分を補い、関係者の認識をそろえるのが工種別施工計画書です。
工種別施工計画書を作成する時期
工種別施工計画書は、原則として対象となる工事に着手する前に作成し、必要な確認や承諾を受けます。
例えば、接地工事、地中埋設配管、スリーブ工事などは、建築工事の早い段階で施工します。電気工事が本格化してから施工計画書を準備したのでは間に合いません。
全体工程表から各工種の着手時期を確認し、次の期間を逆算して作成します。
- 施工内容を検討する
- 使用材料を選定する
- 施工計画書、施工図、要領図などを作成する
- 元請へ提出する
- 発注者や監理者の確認・承諾を受ける
- 指摘事項を修正する
- 施工を開始する
大切なのは「提出日」ではなく、施工開始前に承諾が間に合う日から逆算することです。初回提出で終わるとは限らないため、差し戻しや修正に必要な期間も見込んでおきましょう。
🔶期限付きリスト作成し壁に貼る
私は、施工計画書や施工図、材料承認願など、提出が必要な書類を期限付きのリストにまとめ、壁に貼って管理しています。
仮設事務所の壁は張り紙だらけです。
パソコンの中だけで管理すると、目の前の仕事に追われて提出時期を見落とすことがあります。常に見える場所へ貼っておけば、次に作成すべき書類をすぐに確認でき、さらに担当者メンバーと常に共有できるのもメリットです。
下の表は、電気設備工事で使用する「施工計画書 作成計画表」の一例です。

画像では、接地極埋設工事、スリーブ・インサート工事、地中埋設配管工事、配線・配管工事、ケーブルラック・金属線ぴ工事などを一覧で管理できるようにしています。
▶電気設備工事の施工計画書 作成計画表(Excel)
工種ごとの作成・提出・承諾予定を管理する表です。
電気工事の現場代理人・施工管理担当者向けに、提出状況の整理に使用できます。工事名や日付は、現場に合わせて書き換えてください。
工種別施工計画書の構成
施工計画書の構成は、施主や監理者、ゼネコンによって異なります。
私がこれまで電気工事の現場で作成してきた経験では、次の構成を求められるケースが最も多くありました。
0.表紙・目次
1.総則
2.工事概要
3.工程表
4.施工体制表
5.施工要領
6.施工フロー
7.品質管理
これらを網羅すれば、施工計画書のタタキ台になります。ここから現場ごとの指定書式や要求事項に合わせて修正してください。
0.表紙・目次
表紙には、一般的に次の内容を記載します。
・工事名称
・書類名称または対象工種
・施工会社名
・作成日または提出日
・確認印や承認印を押す欄
ゼネコンが共通の表紙を用意し、専門工事会社は工種名や施工会社名だけを変更するケースもあります。指定の書式がある場合は、必ずそちらを使用しましょう。
目次は各項目をナンバリングし、紙で提出する場合は項目ごとにインデックスを付けると確認する人が目的のページをすぐに開けるため、書類の確認もスムーズになります。
こうした小さな気配りは意外と大切です。
施工計画書は内容だけでなく、「確認する人が見やすい書類」に仕上げることもポイント。
私の経験上、きれいに整理された書類は確認する側にも良い印象を与え、その後のやり取りもスムーズになりやすいと感じています。
以下は、配管・配線工事の工種別施工計画書を想定した表紙の一例です。

※工事名称・会社名・現場代理人名などは、実際の工事内容に合わせて記載してください。
1.総則
総則には、施工計画書を作成する目的、適用範囲、準拠する設計図書、変更疑義、法令などを記載します。
「この施工計画書が、どの工事のどの範囲に適用されるのか」を明確にする項目です。
総則の記載例は次のとおりです。
以下、一般的なものを掲載します。
資料名だけでなく、適用する年版まで確認しましょう。古いひな形を流用すると、参考資料の年版が以前のまま残っていることがあるため注意が必要です。

2.工事概要
工事概要には、工事名称、工事場所、工期、発注者、設計者、監理者、施工者、対象となる電気設備工事などを記載します。
工事全体の概要だけでなく、今回の施工計画書が対象とする工種や施工範囲も明確にします。
総合施工計画書に同じ内容が記載されている場合は、元請や監理者との協議によって一部を省略できることもあります。自己判断で省略せず、提出先へ確認しましょう。
下記作成例です。

施工計画書へ記載する内容や書式は、施主、監理者、ゼネコンによって異なります。そのため、この記載例をそのまま使用するのではなく、設計図書、特記仕様書、使用材料、実際の施工範囲を確認したうえで、その現場に合わせて作成してください。
3.工程表
工程表には、対象工種の施工時期だけでなく、必要に応じて次の予定も記載します。
・施工計画書の提出・承諾
・施工図の作成・承諾
・使用材料の承諾・発注
・材料の製作期間
・現場への搬入
・施工
・自主検査
・監理者検査
・試運転調整
特に、受変電設備や分電盤などの製作期間が必要な機器は、承諾や発注が遅れると現場工程に大きく影響します。
実務上の工夫:全体工程表の対象部分を赤くする
私は、すでに作成してある全体工程表の中から、対象工種に関係する工程を赤く色付けして添付することがあります。
新しい工程表を一から作る手間を抑えながら、対象工種の施工時期を分かりやすく示せる方法です。ただし、提出先から工種別工程表を指定されている場合は、その書式に従ってください。

4.施工体制表
施工体制表には、現場代理人、監理技術者または主任技術者、担当者、職長、協力会社などを記載します。
工事内容によっては、次のような有資格者の一覧も添付します。
・第一種電気工事士
・第二種電気工事士
・認定電気工事従事者
・消防設備士
・各種技能講習・特別教育の修了者
資格が必要となる作業について、誰が責任を持って施工または確認するのかが分かるようにします。
ただ名前を並べるのではなく、施工体制表と実際の現場体制を一致させることが重要です。担当者や協力会社が変更になった場合は、必要に応じて施工計画書や関連書類も更新します。

5.施工要領
施工要領には、対象工種の具体的な施工方法を記載します。
主な記載内容は次のとおりです。
・作業場所と施工範囲
・使用する材料と工具
・支持方法と支持間隔
・固定方法
・接続方法
・取付位置や施工寸法
・他工種との取り合い
・施工上の注意事項
・作業に伴う危険と安全対策
文章だけで説明するよりも、施工要領図や写真、メーカーの施工説明図を併用した方が伝わりやすくなります。
ただし、市販のひな形やメーカー資料をそのまま添付するだけでは不十分です。実際に使用する製品の型式、仕様、施工条件を確認し、該当しない部分を削除または見え消しにして、その現場で採用する方法を明確にします。
施工計画書作成のベースに役立つ本
施工要領を一から考えるのが難しいときに参考になるのが、『現場実務シリーズ2 新編 電気設備工事 施工計画書集成(改訂第3版)』です。
電気設備工事の施工計画をまとめる際の資料として使いやすく、初めて施工計画書を任された人が全体像をつかむ助けになります。
ただし、刊行から時間が経っているため、そのまま転記するのではなく、現在の法令、設計図書、標準仕様書、メーカー資料と照合して使いましょう。
購入先は、記事後半の「施工計画書作成に役立つおすすめ書籍3冊」にまとめています。
施工要領書そのものの作成方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:施工要領書の書き方 ケーブルラック編
6.施工フロー
施工フローは、準備から施工、検査、完了までの流れをフローチャート形式で表したものです。
例えば、次のように記載します。

施工フローを作るときは、実際の作業順序と一致させます。検査や確認が必要な工程は、誰がどのタイミングで確認するのかも明確にすると、施工の抜けを防ぎやすくなります。
7.品質管理
品質管理には、管理項目、管理基準、確認方法、確認者、記録方法、不適合時の対応などを記載します。
電気工事における代表的な確認項目は次のとおりです。
・配管やケーブルラックなどの支持間隔
・電線やケーブルの接続状態
・端子やボルトの締付け状態
・機器の取付位置と固定状態
・耐震支持や耐震措置
・絶縁抵抗測定
・接地抵抗測定
・極性確認
・動作試験
これらをチェック項目としてリスト化し、自主検査表を作成します。検査結果を記録し、必要に応じて施工写真や試験成績書を残せる形にしておきましょう。
施工方法と品質基準の確認に役立つ2冊
施工方法が法令や規格、設計図書に適合しているかを確認するには、根拠となる資料が必要です。施工計画書の「総則」で適用図書として記載した図書は、いつでも確認できるよう現場事務所に常備しておきます。
特に役立つのが、**『内線規程 JEAC 8001-2022』と『公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版』**です。
内線規程は、需要場所における電気工作物の設計・施工・維持・管理について定めた民間規格です。地域によって使用する版が異なるため、購入前に担当する地域の電力会社版を確認してください。私の地域は中部電力の供給区域なので中部電力版が該当します。
公共建築工事標準仕様書は、官庁施設の電気設備工事における標準的な仕様や施工方法を確認するための資料です。公共工事に携わる現場代理人にとって、特に使用頻度の高い一冊といえます。
なお、国土交通省のウェブサイトでは、令和7年版のPDFが無料で公開されています。一方、紙の書籍は、施工計画書を作成しながら付箋を貼ったり、複数のページを行き来して確認したりするときに便利です。現場事務所へ常備して、必要な箇所をすぐに確認したい人にも向いています。
これらの専門書は、一般的な書店では店頭在庫がない場合があります。確実に入手したい場合は、ネット通販で在庫や対応地域、最新版であることを確認してから購入しましょう。
以下では、この2冊を含む「施工計画書作成に役立つおすすめ書籍3冊」を紹介します。
新編 電気設備工事施工計画書集成 改訂第3版
内線規程 JEAC 8001-2022 [東京電力版]
公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版
差し戻されにくい施工計画書を作る5つのポイント
1.最初に元請の指定書式を確認する
過去に別の現場で使用した施工計画書があっても、最初に元請や監理者へ指定書式の有無を確認します。
内容を作り込んだ後で指定書式が見つかると、大幅な作り直しになる可能性があります。
2.ひな形をそのまま提出しない
ひな形は、施工計画書を早く作成するために便利です。しかし、別工事の名称、担当者、使用材料、年版、施工条件などが残っていないか、必ず確認してください。
「前の現場の情報が残っている」という差し戻しは、確認すれば防げます。
3.設計図書・施工図・材料承認願と整合させる
施工計画書だけを単独で作るのではなく、設計図書、施工図、材料承認願、メーカー資料と照合します。
施工計画書ではA社製、材料承認願ではB社製といった食い違いがあると、どちらが正しいのか判断できません。
4.数値と施工方法には根拠を持つ
誤字や脱字であれば訂正で済みますが、記載した施工方法が法令、設計図書、仕様書、内線規程などに反していれば、技術者としての信用に関わります。
支持間隔、施工寸法、電線サイズ、接地工事、耐震措置などを記載するときは、根拠となる資料を確認しましょう。
法令や規程で認められている例外条件を適用する場合も、適用できる条件と根拠を説明できるようにしておく必要があります。
5.電気を専門としない人にも分かるように書く
工事関係者の全員が、電気設備を専門としているとは限りません。
専門用語を並べるだけではなく、図、写真、フローを使い、電気を専門としない人にも施工方法が伝わるように作成することが大切です。
一方で、自分の方が電気の知識を持っているからといって、相手を見下すような説明をしてはいけません。根拠を示しながら、関係者と一緒に施工方法を確認する姿勢が、円滑に承諾を得るためにも重要だと感じています。
まとめ
電気工事の工種別施工計画書は、誰が、何を使い、どのような方法で施工し、どのように品質を確認するのかを関係者で共有するための書類です。
私の経験上、以上のような構成を求められる現場が多くありました。
ただし、施主や監理者、ゼネコンによって、必要な内容や書式は異なります。まず指定書式と設計図書を確認し、対象工事の内容に合わせて作成しましょう。
ひな形や参考書は作成時間を短縮してくれますが、そのまま提出できる完成品ではありません。使用材料、施工方法、適用年版などを一つずつ確認し、その現場で実際に施工する内容へ修正することが大切です。
施工計画書を丁寧に作ることは、差し戻しを減らすだけでなく、現場での認識違い、施工ミス、手戻りの防止にもつながります。
参考資料
・公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版|国土交通省
・工種別施工計画書の作成|電気設備学会
【 関連記事 】
・施工要領書とは?施工計画書との違いと作成方法
・電気工事の施工図の書き方
・電気工事写真の撮り方と管理方法
・施工要領書の書き方 ケーブルラック編



