ケーブルラック施工要領書の書き方|項目別の記載例と作成ポイント

ケーブルラック工事の施工要領書には、使用材料や支持方法、接地・ボンディング、ケーブルの固定方法、検査項目などを具体的に記載します。

しかし、初めて作成するときは「どこまで書けばよいのか」「どのような図を入れれば伝わるのか」と迷うこともあるでしょう。

この記事では、ケーブルラック施工要領書に記載する内容を項目別に解説し、オリジナルの記載例を紹介します。現場で確認しているポイントも交えながら、施工と自主検査に使える要領書のまとめ方を整理します。

工種別施工計画書全体の構成は、関連記事で紹介しています。

これを基に各施工に合わせて作成していく感じになります。

【関連記事:電気工事の工種別施工計画書の書き方

なお、掲載する記載例は、各現場に合わせて調整するための参考例です。実際の作成では、設計図書・特記仕様書・承認された材料資料と、メーカーの施工要領を確認してください。

1.一般事項

ケーブルラック工事の施工要領書では、最初に使用するラックの材質・仕上げ・幅・強度と、支持に使用する吊りボルトの仕様を整理します。

施工要領書を読む人が、**「どの場所に、どの仕様のラックを使用するのか」**を確認できるように記載しましょう。

選定にあたっては、設計図書・特記仕様書と承認された材料資料を確認し、使用するメーカーの製品仕様や施工要領と整合させます。

下図一般的な要領書です。これに現場に合わせて追記し、作成します。

使用場所に応じた材質・仕上げの選定

ケーブルラックの材質と表面処理は、使用場所の環境に合わせて選定します。

一般的な屋内と、湿気・水気の多い場所、屋外では、求められる耐食性が異なります。海岸付近や腐食性ガスが発生する場所などは、さらに個別の検討が必要です。

施工要領書には、次の内容を整理して記載します。

・使用場所
・ラックの形式(はしご形・トレー形など)
・材質と表面処理
・メーカー名と製品型番
・カバーの有無

「鋼製」「アルミ製」といった材質だけでなく、塗装・めっきなどの仕上げも明記します。見える場所に設置する場合は、設計上の色や意匠の指定も確認しましょう。

ケーブルラック幅の選定

ケーブルラックの幅は、敷設するケーブルの種類・本数・仕上がり外径などを基に検討します。

施工要領書には、採用するラック幅と、その選定条件を記載します。

・敷設するケーブルの種類と本数
・各ケーブルの仕上がり外径
・ケーブルの並べ方
・必要な離隔や作業余裕
・増設を見込む場合の余裕

ケーブルが物理的に収まることだけでなく、敷設方法や許容電流に関わる条件も確認します。

曲がり部分の納まりや、ケーブルを敷設するための空間については、施工図でも確認します。

現場ポイント 吊りボルト周りに障害物は無いか?

・天井ふところが狭い現場では、ラック本体が納まっても、ダクトが邪魔になって吊りボルトを取り付けられないことがあります。

・私が現場で確認する際は、ラックの幅と高さだけでなく、吊りボルトや支持材の位置まで含めて、他設備との取り合いを確認しています。

ケーブルラックの強度の確認

ラック幅が決まったら、敷設するケーブルの重量に対して、必要な強度を確保できるか確認します。

同じ幅のラックでも、製品の仕様や支持間隔によって許容積載荷重が異なるため、幅だけで選定を完了しないことが大切です。

施工要領書には、次の条件を記載します。

・採用するラックの型番・強度区分
・敷設するケーブルの想定重量
・支持間隔
・メーカー資料に示された許容積載荷重

荷重表を確認するときは、親げた1本あたりの値なのか、ラック全体の値なのか、また単位が「N」「N/m」などのどれに当たるかを確認します。

掲載する数値は、採用製品の資料に基づいて整理し、その数値が適用される支持条件も併記しましょう。

吊りボルト径の選定

吊りボルト径は、ラック幅だけでなく、ラック本体・ケーブルなどの荷重と、支持方法を確認して選定します。

国土交通省の「公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版」では、ケーブルラックを支持する吊りボルトについて、次の寸法が示されています。

ケーブルラックの幅吊りボルトの呼び径
呼び600mm以下9mm以上
呼び600mmを超えるもの12mm以上

出典:公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版 第2編2.10.1(4)

施工要領書には、実際に採用する吊りボルト径を明記します。設計図書の指定や耐震条件、支持金物・インサート等との適合も併せて確認してください。

吊りボルトを継ぎ足す場合の高ナットや、ねじ込み状態の確認方法は、「水平部の支持方法」で詳しく紹介します。

現場ポイント|吊りボルトの「三分・四分」とは?

現場では、吊りボルトを「三分(さんぶ)」「四分(よんぶ)」と呼ぶことがあります。これはインチねじの呼び方です。ここでは、吊りボルトで使われるウィットねじ(W)を紹介します。

インチねじ 現場の呼び方 外径のミリ換算 太さが近いミリねじ
W3/8 三分(さんぶ) 9.525mm M10(10mm)
W1/2 四分(よんぶ) 12.7mm M12(12mm)

径の数値で見ると、W3/8は「9mm以上」、W1/2は「12mm以上」に当たります。ただし、採用するねじ規格は設計図書や支持部材の仕様に合わせて確認します。

W3/8とM10、W1/2とM12は、太さが近くても互換性はありません。ナット・高ナット・インサート・アンカーは、吊りボルトと同じねじ規格でそろえましょう。

アルミ製ケーブルラックの注意事項

アルミ製ケーブルラックを採用する場合は、支持材との異種金属接触腐食を防止する施工方法を確認します。

使用するボルト・ナットや接続金具についても、メーカーの指定と適用する仕様書に合わせて記載します。

なお、令和7年版の公共建築工事標準仕様書では、はしご形ケーブルラックの子げた間隔は、鋼製300mm以下、アルミ製250mm以下とされています。

2.水平部の支持方法

ケーブルラックの幅や荷重条件に応じて、吊りボルトやアングル材、ダクターチャンネルなどを使用して支持します。

施工要領書では、断面図と施工例を併記することで、実際の現場でどのように取り付けるのかが分かりやすく書きます。

下図は、ケーブルラックを水平方向に支持する場合の施工要領例です。

今回の例では、ラック幅によって支持材や吊りボルトのサイズを変えており、

・比較的小さいケーブルラックでは「9mm吊りボルト+ダクターチャンネル」
・幅600mm程度のケーブルラックでは「12mm吊りボルト+アングル材」

といった施工方法を示しています。

現場ポイント|D2ダクターとLアングルどちらが強度は上?

ケーブルラックの支持材には、D2ダクターやLアングルを使用することがあります。

一般的には、D2ダクターよりも「L-50×50×4t」などのLアングルの方が、 曲げやたわみに対する強度・剛性は高くなります。

そのため、ケーブルラックの幅が広くなったり、支持するケーブルの重量が大きくなったりする場合は、 Lアングルを使用する施工方法が採用されることがあります。

支持材 特徴 使用例
D2ダクター 軽量で施工しやすい 比較的小さいラック、軽い荷重
Lアングル
50×50×4t
強度・剛性が高い 幅の広いラック、荷重が大きい箇所

特にラック幅が広くなると、支持材の中央部分にかかる 曲げモーメントが大きくなり、たわみも発生しやすくなります。

そのため、今回の施工要領書のように、 小さいラックにはD2ダクター、600mm程度の幅広ラックにはLアングル と使い分ける方法があります。

ただし、D2ダクターはメーカーや種類によって断面寸法・板厚・許容荷重が異なります。 最終的な支持材の選定は、ラック幅・積載荷重・支持間隔・メーカー仕様などを確認して決定しましょう。

3.曲がり・分岐部(L形・T形)の支持方法

この施工要領書は、ケーブルラックをL字またはT字に分岐させる場合の支持方法を示したものです。

直線部分と違い、コーナー部や分岐部ではラックにかかる荷重が偏りやすいため、曲がり部分の近くに吊り金物を設けて支持します。

図では、L字・T字ともに曲がりや分岐部分から600mm程度の位置を目安として支持する例を示しています。

また、吊りボルトの位置は、ケーブルラック本体の支持ボルト位置に合わせて施工します。

施工時は、この図を基本としながら、ラック幅・ケーブル荷重・現場の納まりに合わせて支持位置を調整します。

4.垂直部の支持方法

この図は、ケーブルラックを垂直方向に施工する場合の支持方法を示した施工要領です。

垂直に立ち上げるケーブルラックは、横引きとは違い、ラック自体の重量に加えてケーブル重量も下方向にかかるため、適切な間隔で確実に固定する必要があります。

図では、ブラケットやL-50×50×6のアングル材、9mmφボルトを使用して、壁面や床付近でラックを支持する方法を示しています。

ケーブルラックの垂直支持間隔は、原則として3m以下とし、配線室などでは条件に応じて6m以下の範囲で各階支持とする施工例が示されています。

施工時は、ラックの重量や積載するケーブル量、建物側の固定条件を確認し、支持材やボルトを確実に取り付けることが重要です。

5.振れ止め・耐震支持

この図は、ケーブルラックの振れ止め支持方法を示した施工要領です。

ケーブルラックを吊りボルトだけで支持している場合、横方向の揺れや振動が発生することがあります。そこで、振れ止め金具を斜め方向に取り付け、ラックの横揺れを抑える施工を行います。

図では、アンカボルトW3/8、振れ止め金具、吊りボルトを組み合わせてラックを固定する方法を示しています。

また、注意事項として、幅400を超えるケーブルラックを地上3階建以上の建物の2階以上に設置する場合、直線部では8m以下ごとに1か所、そのほかは20m以内に1か所の振れ止めを設けるとしています。

さらに、吊り長さが2mを超える場所や特殊な場所については、別途施工図で支持方法を決定する必要があります。

このように、振れ止めはケーブルラックの揺れや変形を抑え、安定した支持状態を確保するために設けます。

現場ポイント|振れ止めは「見るだけ」ではなく実際に触って確認する

ケーブルラックの振れ止めは、施工後に 実際にラックへ手で触れて、揺れやぐらつきがないか確認することが大切です。

見た目では振れ止め金具が取り付いていても、 ボルトの締付け不足や固定状態によっては、十分に振れ止めが効いていない場合があります。

そのため、施工完了後は目視確認だけで終わらせず、 ラックを軽く動かしてみて、横揺れが抑えられているかを実際に確認しましょう。

「付いているか」ではなく、「効いているか」を確認することが現場では重要です。

6.盤まわりの接続

この図は、ケーブルラックから盤へケーブルを引き込む場合の、盤まわりの接続方法を示した施工要領です。

ケーブルは、ラックから盤へ立ち下げる部分で無理な力がかからないように整理し、ケーブルラックの子げたなどに結束して支持します。

盤上部の開口部には、ベーク板をケーブルサイズや本数に合わせて加工して取り付けます。ケーブル貫通後は、上部から異物やほこりなどが入らないように、必要に応じてシール処理を行います。

また、盤への引込み方法として、ベーク板による処理のほか、ニップル・ブッシングを使用する方法も示されています。この場合も、ケーブルサイズに合ったものを使用することが重要です。

さらに、盤にはアース線を接続し、接地端子まで確実に接続する施工とします。

盤まわりはケーブルが集中しやすいため、見た目だけでなく、ケーブルの支持・開口部の処理・アース接続まで含めて確認することが大切です。

7.接地・ボンディング

この図は、ケーブルラックの接続部などに設けるボンド線の標準施工方法を示した施工要領です。

ケーブルラックは金属製のため、接続部で電気的な導通を確保する必要があります。図では、ラックの接続部にボンド線を取り付け、金属部分同士を確実に接続する方法を示しています。

ボンド線のサイズは、接続部分などの定格電流に応じて選定します。

・600A以下:14mm²、ボルトM8
・600A超:22mm²、ボルトM10

ボンド線の端部には圧着端子を取り付け、ワッシャ・ナット・ボルトを使用してラック本体へ確実に固定します。

また、図では設置箇所についても区分されており、連続接続金具で接続されている部分はボンド線不要、一方で自在継手やL形分岐など、接続部の導通を確実にする必要がある箇所ではボンド線が必要としています。

施工時は、ボンド線を取り付けるだけでなく、端子の締付け状態や接触面を確認し、確実に導通が取れるように施工することが重要です。

8.自主検査チェックシート

この品質管理シートは、ケーブルラック工事が施工要領書や施工図どおりに施工されているかを確認するためのチェックシートです。

一般的には、このようなチェックシートを巻末あたりに添付します。

このシートを使用し、それぞれの確認項目に対して、実際の現場を確認しながらチェックしていきます。

そして、各確認項目どおり適切に施工されている状況の施工写真を撮ります。

現場によって異なりますが、品質管理シートと施工写真をまとめ、表紙を付けて、「施工報告書」として提出するケースが多くあります。

この施工報告書を残しておくことで、施工内容や検査結果を後から確認できるだけでなく、元請や監理者への品質管理の説明資料としても使用できます。

現場ポイント 施工写真は確実に・・

品質管理シートは、工事がすべて終わってからまとめて確認するのではなく、 施工途中で写真を撮りながらチェックしておくことが重要です。

特に、吊り間隔・接地・振れ止めなどは、 天井や仕上げで隠れてしまうと後から確認できなくなるため、 施工時に写真を残しておきましょう。


まとめ

ケーブルラックの施工要領書では、使用材料や支持方法だけでなく、水平支持・垂直支持・L字やT字部分・振れ止め・品質管理まで、実際の施工に必要な内容を分かりやすく記載することが重要です。

特に支持方法については、ラック幅や積載荷重、現場条件によって使用する金物や支持間隔が変わるため、現場に合わせて内容を確認・修正する必要があります。

また、施工要領書を作成して終わりではありません。施工後は品質管理シートを使って自主検査を行い、検査に合格していることを施工写真で記録しておくことが大切です。

現場によっては、品質管理シートと施工写真に表紙を付けて、施工報告書として提出するケースも多くあります。

施工要領書は単なる提出書類ではなく、施工する電気工事士や施工管理者が同じ施工方法を共有し、品質を確保するための重要な資料です。

今回紹介した記載例を参考にしながら、実際の現場条件や元請・監理者の指定に合わせて施工要領書を作成してみてください。

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