
第二種電気工事士の技能試験で、多くの受験者が最初につまずくのが「複線図」です。
単線図を見ても、
- どの電線同士を接続すればよいか分からない
- 白線と黒線の使い分けで迷う
- スイッチから照明へ戻る線が理解できない
- リングスリーブの種類を間違える
- 複線図を書くのに時間がかかりすぎる
と悩む人は少なくありません。
複線図は、決まった順番で書けば難しいものではありません。
この記事では、第二種電気工事士の技能試験を想定し、単線図から複線図へ変換する基本手順、スイッチやコンセントの接続方法、間違えやすいポイントを初心者向けに解説します。
※技能試験の候補問題や欠陥の判断基準は年度によって更新される場合があります。受験年度の最新情報を、必ず電気技術者試験センター公式サイトで確認してください。
複線図とは
複線図とは、実際に使用する電線を1本ずつ書き表した配線図です。
単線図では、複数の電線が入っているケーブルも1本の線で表します。一方、複線図ではケーブルの中にある黒線、白線、赤線などを分けて書きます。
| 図面 | 特徴 |
|---|---|
| 単線図 | 配線を1本の線で簡略化して表す |
| 複線図 | 実際の電線を1本ずつ分けて表す |
技能試験では単線図を見ながら作品を完成させます。
複線図を書けるようになると、次の内容を整理できます。
- 電線同士の接続
- 電線の色
- 器具への接続位置
- ジョイント部分の本数
- リングスリーブの大きさ
- 差込形コネクタの極数
- スイッチの戻り線
つまり複線図は、施工前に作る「配線の設計図」です。
複線図を書く前に覚える基本
複線図を書く前に、電源線、照明、スイッチ、コンセントの関係を理解しましょう。
電源の白線は接地側
技能試験では、電源から来る白線を接地側電線として扱います。
基本的には、次の器具の接地側へ接続します。
- ランプレセプタクルのW端子
- 引掛シーリングの接地側端子
- コンセントのW端子
白線は、照明器具やコンセントへ直接つながる線と考えると理解しやすくなります。
電源の黒線は非接地側
電源から来る黒線は、非接地側電線として扱います。
黒線は主に次の場所へ接続します。
- スイッチの電源側
- コンセントの非接地側
- 常時電源が必要な器具
スイッチには非接地側を入れる
片切スイッチは、照明器具へ送る電気を入り切りする器具です。
基本的な流れは次のようになります。
電源の黒線→スイッチ→照明器具
スイッチから照明器具へ向かう線を「戻り線」と呼びます。
電源の白線を片切スイッチへ直接入れるのではなく、非接地側の電線をスイッチで入り切りするのが基本です。
コンセントのW端子には白線
コンセントの裏側には「W」と表示された端子があります。
WはWhiteを表し、原則として白線を接続します。
複線図を書くときも、コンセントのW端子へ接続する線を白で整理します。
複線図の基本的な書き方
複線図は、次の順番で書くと迷いにくくなります。
- 単線図と同じ位置に器具を書く
- 電源の白線を照明やコンセントへつなぐ
- 電源の黒線をスイッチやコンセントへつなぐ
- スイッチから照明への戻り線を書く
- 電線の色を決める
- 接続点を確認する
- リングスリーブやコネクタを記入する
それぞれ詳しく解説します。
手順1.器具を配置する
最初に、単線図に書かれている器具を複線図上へ配置します。
主な器具は次のとおりです。
- 電源
- ランプレセプタクル
- 引掛シーリング
- 片切スイッチ
- 3路スイッチ
- 4路スイッチ
- コンセント
- 接地極付コンセント
- ジョイントボックス
器具の配置は、単線図と同じ位置関係にしておくと分かりやすくなります。
この段階では、まだ電線をすべて書く必要はありません。
手順2.電源の白線をつなぐ
次に、電源の白線から書き始めます。
電源の白線は、照明器具の接地側端子やコンセントのW端子へつなぎます。
複数の負荷がある場合は、電源の白線を分岐させて各器具へ接続します。
覚え方は次のとおりです。
白線はスイッチを通らず、負荷やコンセントへ向かう
ただし、実際の接続は問題文、配線図、器具の端子表示に従って判断してください。
手順3.電源の黒線をつなぐ
白線を書いたら、電源の黒線を接続します。
電源の黒線は、主に次の器具へつなぎます。
- 片切スイッチの電源側
- コンセントの非接地側
- 常時電源が必要な回路
照明回路では、電源の黒線を照明器具へ直接つなぐのではなく、まずスイッチへ送ります。
コンセントが同じ回路にある場合は、電源の黒線を分岐させ、スイッチとコンセントの両方へ接続します。
手順4.スイッチから照明へ戻り線を書く
次に、スイッチの反対側から照明器具へ線をつなぎます。
この線が戻り線です。
片切スイッチを使用した照明回路は、次の順番になります。
- 電源の黒線からスイッチへ送る
- スイッチから戻り線を出す
- 戻り線を照明器具の非接地側へつなぐ
- 照明器具の接地側を電源の白線へつなぐ
この流れを理解できれば、片切スイッチ回路の複線図は書けるようになります。
手順5.電線の色を決める
すべての接続を書いたら、使用する電線の色を決めます。
技能試験では、問題の施工条件やケーブルの心線数に合わせて電線色を選びます。
基本的な考え方は次のとおりです。
| 電線 | 主な使い方 |
|---|---|
| 白 | 接地側電線、W端子 |
| 黒 | 非接地側電線、電源側 |
| 赤 | スイッチの戻り線、3路・4路回路など |
| 緑 | 接地線 |
ただし、すべての回路で同じ色の使い方になるとは限りません。
特に3路スイッチ、4路スイッチ、複数のスイッチがある問題では、施工条件とケーブルの組み合わせを確認して決めましょう。
手順6.接続点を数える
複線図を書いたら、ジョイント部分で何本の電線を接続するのか確認します。
ここで確認する内容は次のとおりです。
- 接続する電線の本数
- 電線の太さ
- リングスリーブを使用する場所
- 差込形コネクタを使用する場所
- リングスリーブのサイズ
- 圧着マーク
複線図上に接続方法を書き込んでおけば、施工中の間違いを減らせます。
片切スイッチ回路の複線図
電源、片切スイッチ、照明器具が1つずつある基本回路を考えます。
接続の流れは次のとおりです。
接地側
電源の白線→照明器具の接地側端子
非接地側
電源の黒線→片切スイッチ→戻り線→照明器具の非接地側端子
この2つを分けて考えることがポイントです。
最初からすべての線を一度に書こうとせず、「白線」「黒線」「戻り線」の順番で書きましょう。
コンセントがある場合の複線図
照明回路にコンセントが追加されても、基本的な考え方は変わりません。
白線
電源の白線を分岐させ、次の場所へ接続します。
- 照明器具の接地側
- コンセントのW端子
黒線
電源の黒線を分岐させ、次の場所へ接続します。
- 片切スイッチの電源側
- コンセントの非接地側
戻り線
片切スイッチの反対側から、照明器具の非接地側へ接続します。
コンセントには、スイッチの状態に関係なく電気を供給するのが基本です。
そのため、コンセントをスイッチの戻り線側へ接続しないよう注意しましょう。
3路スイッチの複線図
3路スイッチは、1つの照明を2か所から入り切りする回路で使います。
階段、廊下、部屋の出入口などで使用される回路です。
3路スイッチには、一般的に次の端子があります。
- 0番端子:共通端子
- 1番端子
- 3番端子
基本的な接続の流れは次のとおりです。
- 電源の非接地側を片方の3路スイッチの0番端子へ接続する
- 2個の3路スイッチの1番端子同士を接続する
- 2個の3路スイッチの3番端子同士を接続する
- もう片方の3路スイッチの0番端子から照明器具へ接続する
- 照明器具の接地側を電源の白線へ接続する
覚え方は次のとおりです。
0番端子に電源と照明、1番・3番端子はスイッチ同士
器具の端子表示や問題の施工条件を確認しながら接続してください。
4路スイッチの複線図
4路スイッチは、1つの照明を3か所以上から入り切りするときに使用します。
基本構成は次のとおりです。
3路スイッチ→4路スイッチ→3路スイッチ
両端に3路スイッチを配置し、その間に4路スイッチを入れます。
4路スイッチが複数ある場合は、2個の3路スイッチの間へ4路スイッチを追加していきます。
4路回路は線が交差して分かりにくくなるため、次の順番で書くのがおすすめです。
- 電源の白線と照明器具をつなぐ
- 電源の黒線を最初の3路スイッチの0番端子へつなぐ
- 最初の3路スイッチから4路スイッチへ2本つなぐ
- 4路スイッチから最後の3路スイッチへ2本つなぐ
- 最後の3路スイッチの0番端子から照明器具へつなぐ
複線図でよくある間違い
白線を片切スイッチへ入れてしまう
照明回路では、基本的に非接地側の電線をスイッチで入り切りします。
電源の白線から先に書き、照明器具やコンセントのW端子へ接続すると間違いを防ぎやすくなります。
コンセントを戻り線へ接続する
コンセントをスイッチの戻り線へ接続すると、スイッチを切ったときにコンセントも使用できなくなります。
コンセントには電源の白線と黒線を基本として接続します。
W端子を確認していない
コンセント、ランプレセプタクルなどにW端子がある場合は、接続する電線の色を確認します。
複線図へ「W」と書き込んでおくと間違いを減らせます。
3路スイッチの0番端子を間違える
3路スイッチでは、0番端子の接続が重要です。
基本的には、一方の0番端子が電源側、もう一方の0番端子が照明側になります。
接続本数を確認していない
回路自体が正しくても、ジョイント部分の本数を数えていないと、リングスリーブや差込形コネクタの選定を間違える可能性があります。
複線図を書いた後に、接続点を1か所ずつ確認しましょう。
線を交差させすぎる
複線図の線が複雑に交差すると、接続点が分かりにくくなります。
器具を単線図と同じ位置へ配置し、白線、黒線、戻り線の順番で整理すると見やすくなります。
複線図を速く書くコツ
技能試験では、複線図だけに時間をかけるわけにはいきません。
速く正確に書くためには、次の練習が効果的です。
書く順番を毎回同じにする
おすすめの順番は次のとおりです。
- 器具を書く
- 白線を書く
- 黒線を書く
- 戻り線を書く
- 電線色を確認する
- 接続方法を書く
毎回同じ順番で書くことで、考える時間を短縮できます。
電線の色を記号で書く
複線図へ色を記入するときは、次のように簡略化できます。
- 白:シ
- 黒:ク
- 赤:ア
- 緑:ミ
自分がすぐ理解できる記号で構いません。
ただし、練習中から表記方法を統一しましょう。
回路ごとの型を覚える
すべての候補問題を丸暗記するより、次の基本回路を理解した方が応用できます。
- 片切スイッチ回路
- コンセント回路
- 3路スイッチ回路
- 4路スイッチ回路
- パイロットランプ回路
- 自動点滅器回路
基本回路の型を覚えたうえで、候補問題を繰り返し練習しましょう。
完成後の確認順序も決める
複線図を書き終えたら、次の順番で確認します。
- 電源の白線
- 電源の黒線
- スイッチの戻り線
- コンセントのW端子
- 3路スイッチの0番端子
- 接地線
- ジョイント部分
- リングスリーブと圧着マーク
- 差込形コネクタの極数
確認順序を固定すると、短時間でも見落としを減らせます。
複線図の練習方法
複線図は、解説を読むだけでは身につきません。
次の流れで練習しましょう。
- 候補問題の単線図を見る
- 解答を見ずに複線図を書く
- 公式の問題・解答や信頼できる教材で確認する
- 間違えた部分を記録する
- 翌日に同じ問題をもう一度書く
- 正確に書けるようになったら時間を計る
最初は時間がかかっても問題ありません。
まずは正確に書くことを優先し、その後にスピードを上げていきましょう。
候補問題は、電気技術者試験センターの技能試験ページで確認できます。
複線図を書かずに施工してもよい?
複線図を書かずに技能試験の作品を作る受験者もいます。
しかし、初心者が複線図を省略するのはおすすめしません。
複線図を書かずに施工すると、次のミスが発生しやすくなります。
- 電線の色を間違える
- スイッチの接続を間違える
- W端子への接続を間違える
- ジョイントする線を間違える
- コネクタの極数を間違える
- リングスリーブの選定を間違える
複線図に慣れるまでは、簡単な回路でも書く習慣をつけましょう。
試験直前になって安定して正解できるようになったら、自分に合った書き方へ簡略化していきます。
技能試験では欠陥の判断基準も確認する
複線図が正しくても、実際に完成した作品に欠陥があれば合格できません。
特に注意したいのは次の項目です。
- 未完成
- 誤接続
- 電線色や端子の間違い
- リングスリーブの選定ミス
- 圧着マークの間違い
- 芯線の挿入不足
- 被覆のかみ込み
- 芯線の露出
- 器具の破損
- 接地線の未接続
正式な判断基準は、必ず電気技術者試験センターが公開する「欠陥の判断基準」を確認してください。
まとめ
複線図は、単線図で省略されている電線を1本ずつ書き表した図面です。
初心者は、次の順番で書きましょう。
- 単線図と同じ位置に器具を書く
- 電源の白線を照明やコンセントへつなぐ
- 電源の黒線をスイッチやコンセントへつなぐ
- スイッチから照明への戻り線を書く
- 使用する電線の色を確認する
- ジョイント部分の接続本数を数える
- リングスリーブやコネクタを記入する
最も大切なのは、毎回同じ順番で書くことです。
「白線→黒線→戻り線」の順番を守れば、片切スイッチを使った基本回路は整理しやすくなります。
複線図は、一度理解すれば技能試験だけでなく、現場で配線を確認するときにも役立ちます。
候補問題を繰り返し練習し、単線図を見た瞬間に接続がイメージできる状態を目指しましょう。
合言葉は「光るものにダイレクト!」
※電気工事の実作業は感電や火災につながる危険があります。練習は無電圧の教材で行い、実設備の工事は法令上必要な資格を持つ人が、安全確認を徹底して実施してください。



