配線工事施工要領書の書き方|項目別の記載例と作成ポイント

この記事では、配線工事の施工要領書に記載する主な項目と、その書き方を具体例付きで解説します。
現場で実際に使いやすいよう、支持方法・接続方法・表示方法などの記載例も掲載しています。
これから施工要領書を作成する方が、ひな形として参考にできる内容をまとめています。

1.一般事項

最初に、施工要領書の目的、適用範囲、使用する電線・ケーブル、準拠する図書を明確にします。

施工要領書を読む人が、**「どの工事の、どの範囲に、どの材料と施工方法を適用するのか」**を確認できるように記載しましょう。

一般事項の記載例

目的
本施工要領書は、本工事における配線工事の施工方法および品質管理方法を定め、誤結線、電線・ケーブルの損傷、接続不良などを防止し、設計図書に示された要求品質を確保することを目的とする。

適用範囲
本施工要領書は、本工事における低圧幹線、動力、電灯、コンセントおよび弱電設備の配線工事に適用する。ただし、別途施工要領書を作成する特殊配線およびメーカー指定工法は除く。

使用材料
使用する電線・ケーブル、接続材料、支持材および表示材は、設計図書および承認された材料資料に適合するものとする。採用するメーカー名、製品名、型式、サイズおよび使用場所を材料一覧表に記載する。

準拠図書
・設計図および特記仕様書
・承認された施工図および材料資料
・公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)の適用年版
・電気設備の技術基準および同解釈
・内線規程の適用年版
・消防法、建築基準法その他の関係法令
・採用製品のメーカー施工要領書

2.電線・ケーブルの識別方法

配線の識別方法は、誤結線を防止し、竣工後の点検や改修を行いやすくするために記載します。

元資料の色別表をそのまま一般基準として使用するのではなく、設計図書、盤図、現場共通ルール、ケーブルの心線色を確認し、今回の工事で採用する識別方法に絞って作成します。

施工要領書に記載する内容

  • 電圧種別と電気方式
  • 幹線・電灯・コンセント・動力などの回路種別
  • 各相、中性線、接地線の識別方法
  • ケーブル端部に使用する色別テープやマークチューブ
  • 盤図、端子記号、回路番号との整合
  • 既設設備へ接続する場合の確認方法

識別方法の記載例

電線・ケーブルの相別および回路種別は、設計図書、盤図および現場共通の色別基準に従う。ケーブルの心線色だけで識別できない場合は、両端部および接続箇所に色別テープ、マークチューブなどを取り付ける。

既設回路へ接続する場合は、既設側の色だけで判断せず、停電確認、回路調査および導通確認を行ったうえで接続する。接続後は盤図、回路番号、負荷名称と実際の結線が一致していることを確認する。

現場ポイント 既設配線は信用してはいけない

既設改修などで既設配線へ接続する場合は、 電線の色だけで相別や接地側を判断しないことが重要です。

改修や増設を繰り返した建物では、現在の色別ルールと異なる配線や、 途中で色が変わっている配線もあります。既設回路は、停電確認、電圧測定、 導通確認、回路追跡などを行い、接続先を確実に確認してから施工しましょう。

3.電線管などへの電線収容

電線管、金属ダクト、金属線ぴなどへ電線を収める場合は、配線方法に応じた収容条件を確認します。

電線管の太さは、単に電線が入るかどうかだけで決めません。電線の種類、太さ、本数、管路の長さ、曲がりの数、施工性、将来の入替えなどを考慮して選定します。

収容率や収容本数は条件によって異なるため、古いひな形に記載された数値をそのまま転記せず、適用する内線規程、設計図書およびメーカー資料で確認してください。

収容条件の記載例

電線管などへ収容する電線の種類、太さおよび本数は、設計図書、適用する内線規程および製品仕様に基づいて決定する。異なる太さの電線を同一管路へ収容する場合は、各電線の断面積および適用条件を確認する。

施工図には、管種、管径、電線の種類・太さ・本数を記載する。曲がりが多い管路、長距離の管路または将来増設を見込む管路は、通線性を考慮して管径、プルボックスの位置および大きさを検討する。

4.電線管への通線

通線時は、電線・ケーブルの被覆を傷つけず、管路内の水分や異物を除去した状態で施工することが重要です。

通線方法の記載例

  1. 通線前に管路の導通を確認し、管内の水分、切粉、異物などを除去する。
  2. 管端部にブッシングなどを取り付け、電線・ケーブルの被覆を保護する。
  3. 潤滑材を使用する場合は、電線・ケーブルの被覆および管材に適合する製品を使用する。
  4. 通線する電線・ケーブルの種類、太さ、本数および行先を確認する。
  5. 無理な引張りや急激な引込みを避け、許容張力および許容側圧を超えないように施工する。
  6. 通線後は、被覆の損傷、余長、識別表示および管端部の保護状態を確認する。

プルボックス内では、電線・ケーブルの重量がふたにかからないように納めます。また、接続や点検に必要な余長を確保し、ふたを閉じた際に電線を挟み込まないよう注意します。

5.ケーブルの曲げ半径

ケーブルを急角度で曲げると、絶縁体やシースの損傷、導体への無理な力、端末部への負担につながります。そのため、施工要領書には採用するケーブルの最小曲げ半径を記載します。

公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版では、電力用ケーブルの曲げ半径について、次の値が示されています。

ケーブルの種別単心以外単心
低圧ケーブル仕上り外径の6倍以上仕上り外径の8倍以上
低圧遮へい付ケーブル・高圧ケーブル仕上り外径の8倍以上仕上り外径の10倍以上

デュプレックス形、トリプレックス形、カドラプレックス形は、より合せ外径を基準とし、「単心以外」の値を適用します。低圧の耐火ケーブルおよび耐熱ケーブルは、低圧ケーブルに含まれます。

ただし、通信ケーブル、光ファイバケーブル、同軸ケーブル、特殊ケーブルなどは製品ごとに条件が異なります。必ず採用製品の仕様書と施工要領を確認してください。

6.電線・ケーブルの接続

電線の接続は、使用する電線と接続材料に適合した工具および方法で施工します。施工要領書には、接続材料、適用電線、被覆のむき長さ、圧着または差込み方法、絶縁処理、施工後の確認方法を記載します。

圧着接続の記載例

  1. 電線の種類、導体サイズおよび本数に適合する圧着端子・圧着スリーブを選定する。
  2. 端子・スリーブに適合する圧着工具およびダイスを使用する。
  3. 導体を傷つけないように被覆を除去し、導体表面の汚れや異物を確認する。
  4. 規定位置で圧着し、圧着マーク、圧着状態、導体の挿入状態を目視確認する。
  5. 必要な絶縁性能、耐水性、耐火性能を満たす方法で接続部を処理する。

テープ処理の材料、巻数、重ね幅は、接続材料と施工場所に応じて決定します。屋外、水気・湿気のある場所、地中部などでは、一般屋内と同じ処理でよいとは限りません。

差込み形コネクタの記載例

  1. コネクタの適用電線種類、導体径、本数および使用場所を確認する。
  2. メーカーが指定する長さで被覆をむき、導体に傷、曲がり、腐食がないことを確認する。
  3. 電線を規定位置まで確実に差し込み、確認窓などから挿入状態を確認する。
  4. 施工後は電線を1本ずつ軽く引き、抜けや緩みがないことを確認する。
  5. 再施工する場合は、メーカーの指示に従って電線端部とコネクタの再使用可否を確認する。

「単線ならすべて使用できる」「より線には棒形端子を付ければ使用できる」と一律に判断せず、採用するコネクタの仕様を優先します。

現場ポイント 差込コネクタ禁止の場合も・・

差込形コネクタは施工性に優れた接続材料ですが、現場の仕様書や施工基準によっては、使用が認められていない場合があります。

主な理由は、電線の差込み不足を外観だけで判断しにくいこと、使用できる電線の種類や太さが限られていること、製品によって再使用できないことなどです。また、点検しにくい場所では、圧着スリーブによる接続を指定されることもあります。

耐火ケーブルなどの接続

耐火ケーブル、耐熱ケーブル、防災設備用配線などは、認定された接続工法やメーカー指定の材料・施工方法に従います。一般ケーブルの接続方法を流用せず、採用製品の接続要領書を施工要領書へ添付するか、承認された工法を明記してください。

7.天井内・二重床内・造営材沿いの配線

隠ぺい部の配線は、天井や床を仕上げた後に確認しにくくなります。支持間隔だけでなく、他設備との接触、ケーブル被覆の保護、接続箇所の点検性まで記載しましょう。

二重天井内配線

公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版では、二重天井内でケーブルを支持して敷設する場合、支持間隔は2m以下とされています。

ケーブルおよび周囲環境に適合する支持具・支持材・バンドなどを使用し、ケーブル被覆を傷つけないように固定します。天井つりボルトや天井下地材には、ケーブルによる過度な荷重をかけないようにします。

ケーブルを束ねる場合は、許容電流に必要な補正を行い、弱電流電線、水管、ガス管、ダクトなどと接触しないように敷設します。

造営材沿い配線の支持間隔

敷設区分支持間隔
造営材の側面または下面に水平方向へ敷設する場合1m以下
人が触れるおそれがある場所1m以下
その他の場所2m以下
ケーブル相互、ケーブルとボックス・器具との接続箇所接続箇所から0.3m以下

支持間隔は配線場所によって異なります。元資料の「一律2m以下」だけでは不足するため、施工場所ごとに分けて記載しましょう。

8.ケーブルラック上の配線

ケーブルラック上では、ケーブルの種類、太さ、本数、重量、許容電流、曲げ半径、垂直部の荷重などを確認して敷設します。

施工要領書には、次の内容を記載します。

  • 電力・通信・防災などの配線区分
  • ケーブルの並べ方と積重ねの可否
  • 水平部・垂直部の固定方法
  • 使用する結束材、支持材および適用ケーブル
  • 曲がり部、分岐部、盤引込み部の処理
  • 表示札の取付位置

結束バンドの商品名や幅だけで決めず、ケーブル重量、使用場所、耐候性、耐熱性、難燃性およびメーカーの許容荷重を確認して選定します。垂直部ではケーブルの自重が一つの子げたへ集中しないよう、採用する支持システムに従って荷重を分散します。

ケーブルラック本体の選定、水平・垂直支持、曲がり部、耐震支持、接地・ボンディングについては、次の記事で詳しく解説しています。

【関連記事:ケーブルラック施工要領書の書き方|項目別の記載例と作成ポイント

9.回路名・行先表示

ケーブルの要所には、回路種別、行先、送り出し元などを確認できる表示札や表示シートを取り付けます。

表示内容の例

配線区分主な表示内容
幹線幹線番号、送り出し盤、行先盤、電気方式・電圧、ケーブル種類・サイズ
動力盤名称、回路番号、負荷機器番号、負荷名称
電灯・コンセント分電盤名称、回路番号、電圧、使用場所
弱電・通信設備名称、系統番号、送り出し元、行先、ケーブル種類・サイズ
非常・防災設備名称、回路番号、非常用・防災用であることが分かる識別

表示札は、盤内、プルボックス内、ケーブルラック上、EPS、区画貫通部の前後、機器接続部など、点検時に確認しやすい位置へ取り付けます。

表示内容と盤図、施工図、回路名が一致していないと、竣工後の点検や改修で混乱します。表示方法だけでなく、どの図面・台帳と照合するのかも決めておきましょう。

10.自主検査チェックシート

施工要領書の最後には、計画した施工方法どおりに施工できているかを確認する自主検査チェックシートを添付します。

チェックシートには、作業場所、施工日、確認日、確認者、合否、是正内容、是正確認日を記入できる欄を設けます。

施工写真は、天井や壁で隠れる前に撮影します。特に、支持方法、接続部、貫通部、区画処理、回路表示などは、施工完了後に確認できなくなる可能性があります。

工事写真の基本については、次の記事も参考にしてください。

【関連記事:工事写真の撮り方|撮影の基本と失敗しない7つのポイント

〇 配線工事施工要領書を作成するときの注意点

古い施工要領書をそのまま流用しない

過去の要領書は、構成を考えるための参考にはなります。ただし、古い規格、現在使用していない材料、特定メーカーの商品名、現場独自の色別ルールなどが含まれていることがあります。

文章を置き換えるだけでなく、数値、適用条件、製品名、参考図書の年版まで確認しましょう。

現場で使用する工法だけを残す

使用しない耐火ケーブルの接続方法や、採用しない支持金物の説明まで残すと、どの工法を実施するのか分かりにくくなります。

施工要領書のベースを作成した後は、現場で使用しないページを削除し、採用する型式・寸法・施工条件を追記してください。

図面・材料承認・施工要領書を一致させる

施工要領書に記載したケーブル、接続材、支持材が、施工図や材料承認願と異なっていては意味がありません。

提出前に、設計図、施工図、材料承認資料、メーカー施工要領書、自主検査項目を並べて確認すると、記載の不一致や漏れを見つけやすくなります。

施工図の作成方法については、次の記事で詳しく解説しています。

【関連記事:電気施工図の書き方|初心者向けに現場代理人目線で7ステップ解説

まとめ

配線工事の施工要領書では、電線・ケーブルの種類を並べるだけでなく、識別、収容、通線、曲げ、接続、支持、貫通部処理、表示、絶縁抵抗測定まで、実際の施工と確認方法が分かるように記載することが重要です。

特に、電線の色別、電線管への収容、接続材料、曲げ半径、支持間隔は、適用条件や採用製品によって内容が変わります。過去のひな形をそのまま使わず、設計図書、特記仕様書、承認材料、現行の基準類、メーカー施工要領書を確認してください。

また、施工要領書は提出して終わりではありません。作業前に施工者へ周知し、施工中は要領書に沿って確認と写真撮影を行い、完了後は自主検査結果を記録します。

今回紹介した記載例をベースに、不要な項目を削除し、現場で採用する材料・工法・管理基準を追記して、実際に使える施工要領書へ仕上げてください。

【関連記事】

参考資料


【 関連記事 】

おすすめの記事