絶縁抵抗測定のやり方|基準値・メガーの使い方・絶縁不良の探し方を解説

電気工事の竣工検査や改修工事で欠かせないのが、絶縁抵抗測定です。

絶縁抵抗測定は、単にメガーを当てて数値を確認すればよいわけではありません。測定電圧を誤ると接続機器を故障させる恐れがあり、周囲の作業員が電線に触れている状態で印加すれば、重大な事故につながります。

この記事では、絶縁抵抗測定の基本的なやり方から基準値、測定結果表の書き方、絶縁不良箇所の探し方まで、現場経験を交えて解説します。

絶縁抵抗測定では高い直流電圧を印加します。測定は電気設備の構成と危険性を理解した作業者が、現場の安全手順・仕様書・測定器の取扱説明書に従って行ってください。

絶縁抵抗測定とは

絶縁抵抗測定とは、電線相互間または電路と大地との間に直流電圧を加え、電気が漏れにくい状態になっているか確認する検査です。

測定には、一般に「メガー」と呼ばれる絶縁抵抗計を使用します。

絶縁抵抗が低下していると、次のような事故につながる可能性があります。

・漏電
・感電
・漏電遮断器の動作
・機器の誤作動
・電気火災
・設備停止

竣工時だけでなく、既設設備の改修後や漏電調査、定期点検などでも重要な測定です。

絶縁抵抗の基準値

低圧電路の絶縁抵抗値は、電路の使用電圧によって次のように定められています。

電路の使用電圧条件絶縁抵抗値
300V以下対地電圧150V以下0.1MΩ以上
300V以下上記以外0.2MΩ以上
300V超過0.4MΩ以上

根拠は「電気設備に関する技術基準を定める省令」第58条です。e-Gov法令検索

対地電圧とは、接地式電路では電線と大地との間の電圧、非接地式電路では電線間の電圧をいいます。

例えば、単相3線式100/200V回路は線間電圧が200Vでも、対地電圧は100Vです。ただし、実際の判定では電路の接地方式や設備仕様を確認してください。

なお、法令の基準値は最低限必要な絶縁性能です。新設工事では、設計図書、施工要領書、検査要領書、発注者の基準などで、さらに高い判定値が指定される場合があります。

測定電圧の選び方

絶縁抵抗計には、125V、250V、500V、1,000Vなどの測定レンジがあります。

測定電圧は、高ければよいというものではありません。回路に接続されている電子機器、LED照明、調光器、センサー、通信機器、SPDなどへ過大な電圧を加えると、故障させる可能性があります。

測定前に、次の項目を確認します。

・回路の使用電圧
・接続されている機器
・機器を切り離せるか
・設計図書や検査要領書の指定
・絶縁抵抗計の取扱説明書
・機器メーカーが指定する試験電圧

測定対象に適したレンジが分からない状態で、むやみに高い電圧を印加してはいけません。

絶縁抵抗測定前の安全確認

1.測定対象を停電させる

測定する回路のブレーカーを遮断し、必要に応じて電源側から切り離します。

ブレーカーを切っただけで無電圧だと思い込まず、検電器や電圧計を使って無電圧を確認します。誤配線、別回路からの回り込み、自家発電設備や太陽光発電設備からの逆送にも注意が必要です。

2.接続機器を確認する

絶縁抵抗測定では直流電圧を印加するため、電子機器などが接続されたままになっていないか確認します。

コンセント回路では、接続されているプラグを抜くだけでなく、固定接続された機器や盤内機器も確認しましょう。

3.絶縁抵抗計をゼロチェックする

私が測定前に必ず行うのが、絶縁抵抗計のゼロチェックです。

リード線の先端を短絡させて測定し、ほぼ0MΩを示すことを確認します。これにより、絶縁抵抗計本体、リード線、電池が正常に機能しているか確認できます。

あわせてリード線を開放した状態で測定し、アナログ式では∞、デジタル式ではオーバー表示になることも確認しておくと確実です。

共立電気計器の測定手順でも、電池確認、短絡状態での0MΩ確認、開放状態での∞またはオーバー表示確認が案内されています。絶縁抵抗計ガイドブック

4.周囲の作業員へ周知する

絶縁抵抗測定で最も注意したいのが、測定対象の電線に誰も触れていないことです。

測定する前に、職人が器具付けや結線作業をしていないか確認します。私は印加する直前に、

「メガー当てます」

と現場全体へ声をかけ、対象回路の電線に誰も触れていないことを確認してから測定します。

ブレーカーが切れていても、絶縁抵抗計からは測定電圧が印加されます。「停電しているから触れても大丈夫」という思い込みは危険です。

絶縁抵抗測定の基本的な手順

一般的な対地間絶縁抵抗測定は、次の流れで行います。

  1. 測定対象回路を確認する
  2. ブレーカーを遮断する
  3. 検電器などで無電圧を確認する
  4. 接続機器や電子機器の有無を確認する
  5. 必要な機器を回路から切り離す
  6. 測定器の外観・電池・リード線を確認する
  7. ゼロチェックと開放チェックを行う
  8. 適切な測定レンジを選択する
  9. アース側リードを接地端子へ接続する
  10. ライン側リードを測定対象の電路へ当てる
  11. 周囲へ「メガー当てます」と周知する
  12. 誰も電線に触れていないことを確認する
  13. 測定電圧を印加して数値を読む
  14. 測定後に残留電荷を放電する
  15. 測定結果表へ記録する

測定後はすぐにリード線を外さず、絶縁抵抗計の放電機能などを使用して残留電荷を放電します。測定器ごとに操作方法が異なるため、取扱説明書に従ってください。

線間と対地間は何が違う?

対地間絶縁抵抗

電路と大地との間の絶縁状態を確認する測定です。

接地端子や接地された金属部分へアース側リードを接続し、測定対象の電路へライン側リードを当てます。漏電や感電につながる絶縁不良を確認するために行います。

線間絶縁抵抗

電線相互間の絶縁状態を確認する測定です。

線間測定では、回路に接続された表示灯、小型変圧器、電子機器などを通して導通する場合があります。接続状態を確認せずに測定すると、正しい絶縁抵抗値を確認できないだけでなく、機器を故障させる恐れがあります。

線間測定は、測定対象となる機器を適切に切り離したうえで実施します。

絶縁抵抗値が低いときの探し方

絶縁抵抗値が基準を満たさない場合は、回路を細かく分けながら不良範囲を絞り込みます。

  1. 不良となった分電盤と回路番号を確認する
  2. 接続されている負荷や器具を切り離す
  3. 中間ボックスや接続点で回路を分割する
  4. 分割した範囲ごとに再測定する
  5. 数値が低い側をさらに細かく分ける
  6. 器具・電線・接続部・ボックス内を目視確認する
  7. 不良箇所を是正する
  8. 是正後に再測定する
  9. 再測定日と測定結果を記録する

最初から天井裏全体を探すのではなく、分電盤から回路を分けて不良範囲を小さくしていくのが基本です。

現場で実際にあった絶縁不良の原因

新築工事で多いのは器具の誤接続

新築工事で絶縁抵抗値が悪い場合、まず疑うのが器具の誤接続です。

コンセント、スイッチ、照明器具などの端子へ誤って接続していたり、心線が器具の金属部分に接触していたりすることがあります。

器具付けの直後に数値が悪くなった場合は、最後に接続した器具から確認すると原因を発見しやすくなります。

軽量鉄骨下地とボードに電線が挟まっていた

配線方法が雑な現場では、軽量鉄骨下地と石こうボードの間に電線が挟まり、被覆が傷ついて絶縁不良になっていたことがあります。

隠蔽されてしまうと目視確認が難しくなるため、配線時に電線の経路を整え、ボード施工前にも挟み込みがないか確認することが重要です。

絶縁不良を直すだけでなく、「なぜ挟まったのか」を確認して施工方法を改善しなければ、同じ不良が別の場所でも発生します。

改修工事ではボックス内への浸水も疑う

改修工事で実際にあったのが、ボックス内に水がたまって絶縁抵抗値が低下していたケースです。

屋外、地下、厨房、浴室周辺、結露しやすい場所では、次の項目を確認します。

・ボックス内への浸水
・結露
・配管からの水の侵入
・パッキンやシールの劣化
・端子や接続部の腐食
・ケーブル被覆の劣化

既設設備では、施工不良だけでなく、経年劣化や使用環境も含めて原因を探す必要があります。

絶縁抵抗測定結果表の書き方

測定結果表には、測定値だけでなく、どのような条件で誰が測定したのか分かる情報を残します。

基本情報

・現場名
・測定日
・天気
・気温
・湿度
・測定者名
・使用した測定機器
・測定器の型式や管理番号
・測定レンジ

絶縁抵抗値は温度や湿度などの影響を受けるため、測定条件を記録しておくことで、過去の測定結果と比較しやすくなります。

回路ごとの記録項目

分電盤名回路番号負荷名称測定箇所測定レンジ測定結果合否備考
LP-11事務室照明対地間500V100MΩ以上
LP-12廊下コンセント対地間500V0.05MΩ是正後再測定
LP-12廊下コンセント対地間500V100MΩ以上8月26日再測定

分電盤名、回路番号、負荷名称まで記載しておけば、後から不具合が発生した場合も対象回路を追いやすくなります。

「∞」はそのまま記載しない

絶縁抵抗計の表示が「∞」やオーバー表示になった場合でも、結果表へそのまま「∞」と記載するのではなく、使用した測定レンジや測定器の上限に合わせて、

100MΩ以上
200MΩ以上
1,000MΩ以上

などと記載します。

「∞」は抵抗値が本当に無限大という意味ではなく、その測定器または設定レンジで測定できる上限を超えているという意味です。

そのため、測定結果には「○○MΩ以上」と記載し、どの測定レンジを使用したのかも残しておくことが重要です。

合否判定の記載方法

測定結果表の欄外には、今回の検査で使用する判定基準を明記します。

記載例は次のとおりです。

【判定基準】
対地電圧150V以下の電路:0.1MΩ以上
300V以下で上記以外の電路:0.2MΩ以上
300Vを超える電路:0.4MΩ以上
ただし、設計図書または検査要領書に別途指定がある場合は、その値による。

欄外に記載した判定基準と測定結果を比較して、合否欄へ「合」「否」などを記入します。

不合格となった場合は、不良箇所を是正してから再測定し、再測定日、測定値、合否、是正内容を記録します。最初の不合格データを消してしまうのではなく、是正前後の経過が確認できる形で残すことが大切です。

絶縁抵抗測定で起こりやすい失敗

・測定前に無電圧を確認していない
・測定対象の回路を間違えている
・電子機器を接続したまま高い電圧を印加する
・測定レンジを記録していない
・周囲の作業員へ声をかけずに印加する
・測定後の放電を行っていない
・「∞」をそのまま測定結果として記載する
・不良箇所の是正後に再測定していない
・分電盤名や回路番号が記録されていない
・測定器のゼロチェックを行っていない

絶縁抵抗測定は、測定値だけでなく、測定前後の安全確認と記録まで含めて一つの検査です。

まとめ

絶縁抵抗測定は、漏電、感電、電気火災などを防ぐための重要な検査です。

測定では、次のポイントを必ず確認しましょう。

・対象回路を停電させて無電圧を確認する
・接続機器に適した測定電圧を選ぶ
・測定前にゼロチェックを行う
・電線に触れている作業員がいないことを確認する
・「メガー当てます」と周囲へ周知してから印加する
・測定後は残留電荷を放電する
・結果は「○○MΩ以上」と記録する
・分電盤名、回路番号、負荷名称まで記載する
・不良箇所を是正した後は再測定する
・再測定日と結果を記録する

新築工事では器具の誤接続や電線の挟み込み、改修工事ではボックスへの浸水や経年劣化など、工事の種類によって疑うべき場所が異なります。

数値が悪いときは闇雲に探さず、回路を分割しながら不良範囲を絞り込むことが、早期発見のポイントです。

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